建設業の労働生産性を高めるためには(6)

今回は、2つ目の課題「設計、積算強化」について考えていきます。さて、この設計、積算について、公共工事と民間工事を分けて考えます。

まず、公共工事の場合です。公共工事は、発注者から与えられた仕様、設計図面に従い、入札が行われます。つまり、設計に関しては、既に作成されているため、この仕様及び設計図面に基づき積算、見積が行われ、入札を経て受注が確定します。この際、入札金額に最低ラインが引かれ、粗悪な低価格受注を防止する措置が講じられています。従って、最低ラインを踏まえた積算、見積となります。

設計については、作成済みと言いました。発注者は、設計の善し悪しに対する交渉に余地を残しつつ、質疑がある場合には受注後の協議事項となる場合が多く、見直しをすることなく、早期に入札を終了します。つまり、施工業者は、受注後に設計の善し悪しを交渉することになりますが、ここに多くの問題が潜んでいます。設計は、建設コンサルタントであり、別途発注です。しかも、特殊な場合を除き、標準施工(任意仮設、任意施工など)での設計となります。しかし、現地では、仕様や設計図面と整合性が取れない工法、施工方法が発生します。建前上、施工業者は、入札前に仕様や設計図面等をきちんと精査することが課せられていますが、入札前にその協議の場が与えられず受注に至る状況では、設計に対する対応が不十分となっているのも致し方ないと言えます。

但し、本来設計は、発注者サイドで処理するもので、施工業者は、現地調査並び測量の上、現工法或いは施工方法では、工事ができない或いは予想を大きく超えるコストが発生するという実態を報告するだけです。この現地調査測量も設計機能ですが、恐らく、この調査測量に掛る経費は、積算上組み込まれていると考えられますが、見えづらく場合により経営に影響するコストとなる可能性大です。この仕様及び設計図面の精査における調査測量といった設計機能の費用分担は、建設生産システム上見直しの余地があるように感じます。但し、現状では、設計に対する対応も施工業者において重要課題です。法的解釈を踏まえ、交渉することが求められます。何故ならば、発注者との一方的な交渉となっては、経費の増加に歯止めが効かないからです。

次は、民間工事の場合です。民間工事の場合は、個人住宅、法人企業などが対象となり、設計施工が基本です。土地などの不動産も扱うなどその範囲は広く、新築に限らずリフォームに至るまで市場ニーズも豊富です。しかも、設計の重要性は、近年益々高いと言われています。最近は、企画物件により企業の設計負担を軽減することや顧客の仕様決定に3D化やタブレットによる映像でのプレゼンが、より効果があると言われています。つまり、設計の効率化や不具合を無くすことが、着目されていると言うことです。

しかし、依然として顧客の多様化したニーズに振り回され、設計積算に多くの時間を費やしているのが実情です。又、施工の途中に於いても、手戻りとなることが多く、その原因も仕様のミスマッチや関係者間の意思疎通が悪いことなど、顧客が要求した仕様、設計通りに施工できないことに起因しています。如何に、仕様の確認、その仕様通りの設計積算が確実に且つスピーディーに行われるかで、計画通りの施工に移行できるのです。

実情は、段取り変更や軌道修正などが加わることで、大きく施工の質に影響しています。そのためにも、設計にもっと着目すべきです。費用対効果の源泉は、設計にあるといっても過言ではありません。営業がいくら沢山の受注を獲得しても、設計が機能しなければ最悪です。従って、設計を強化することに躊躇してはいけません。人員を確保することも重要ですが、設計者は、ユーザーや社会の立場に立ち、物事を考えることができることです。顧客に言われたことだけを、図面に落とし込むだけの設計では意味がありません。顧客が何を求めているのか、顧客の言葉足らずや表現不足を補うサポーティングも必要です。分かりやすく説明し、顧客に理解して頂ける重要な役割が、設計者です。しかも、顧客と合意した仕様により、図面化し、積算を行うことで工事全体に掛る経費を算出し、営業担当者や工事担当者に伝えていくなど情報の共有化、一元化も同様に重要です。

さて、次回は、施工の質向上を考える上で、3つ目の課題「生産システム(施工体制)体質改善」について考えます。

最新記事

アーカイブ