改革を進めるための専門家活用(6)

今回は、専門家を活用したにも関わらず、成果に繋がらず失敗に至った例をご紹介致します。これらの事例は本来あってはならないことですが、現実に起こっています。

専門家は勿論ですが経営者においても、このような失敗を絶対に繰り返さないために、自社と比較しながら考えて下さい。以下に主な失敗例を列挙します。

①「育成対象者のズレ」、②「専門家が何かを与えてくれると信じていた」、③「システムの見直しが終わったら改革が進まない」④「経営者自身、真の体質改善を考えていなかった」、⑤「専門家と情報共有を疎かにした」

まず、①「育成対象者のズレ」です。この事例は多くの企業で経験している可能性があります。ある企業において、若手を早期に一人前の技術者にしたいので、若手を対象にした研修を企画してほしいというものです。目的は、若手技術者の早期育成です。その内容はと言えば、基本的な業務上の知識、現場の運営方法、施工管理、そして作業内容や施工方法、工法などです。本来、専門家が直接指導する内容ではなく、自社の先輩上司が行うべき内容です。企業も、一般論を聞きたいわけではなく、自社のやり方、考え方に沿った実践的な知識を習得させ、若手技術者の早期能力向上に繋げることが狙いです。そのための企画であるべきです。しかし、実際は専門家による上記の内容をテーマにした研修となり、他社の参考事例を聞く内容となりました。しかし、成果を実感できないまま毎年継続する形になりました。

さて、何故このような結果となってしまったのかです。原因は、2つです。一つは、育成対象者はあくまで若手技術者に限定し、中堅やベテラン、幹部などは対象外だと勘違いしていることです。二つ目は、単純に自分達には、教えることができない又は教える手間をかけたくないので、専門家にお願いするというものです。どちらも、本当に若手技術者を育て、一人前にしたいと願っていることでしょうか。若手技術者の育成を安易に考えすぎです。将来を担う社員をどのように育てるか、企業にとり最重要課題という認識が欠落しています。

次に、②「専門家が何かを与えてくれると信じていた」です。ある企業は、専門家を招き、経営が悪化した現状から脱却し、立て直しを図りたいと考えました。経営者は、専門家に対し、わらにもすがる思いで立て直しに期待を寄せていました。専門家が当社に何かを与えてくれると信じていたわけです。

ところが、社員は冷めた意見でした。例えば、このような意見が散見していました。「今、現場が忙しい時期なのに、余計なことはとてもできない。」、「業界のことを理解していない専門家に分かるはずはない。」など。経営者についてくる社員は、一人もいない状況でした。何故、このような状況に陥ってしまったのでしょうか。原因は、経営者と社員間でのコミュニケーション不足と経営の実態をきちんと社員に告げ、改革を共に行うという動機づけも不足していたからです。経営者は社員を信じて任せるところは任せ、組織で成果を出させることなのです。つまり、頼るべきは専門家ではなく、社員なのです。但し経営改革の方法は専門家の手を借りて行うことは必要ですが、改革を行うのは自社の社員です。専門家には、改革に向けて、考え方や進め方、手順を提示して頂き、社員自身が改革を実施するのです。このような状況では、社員が単なる抵抗勢力で、成果に繋がる筈はありません。

次回も、引き続き専門家を活用した失敗例を考えます。

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